伊集院静
ノンフィクション・小説
2011年3月に初版を出すも2カ月後の5月には、第6刷発行となっていますので 相当数、売れているのでしょうか。
でもホントいいです。 イイ男です。
「あなたは筋を通す大人が、卑しくない男が少なくなった、、と嘆く資格が有りますか?」
大人の「人」として、「男」として、こうあらねばならない論を 春・夏・秋・冬で、人生で起こり得るべき出来事に沿って、また作者が経験した上での 対応方法(仕事、墓参りの作法、食通への苦言、ゴルフの真髄、酒の飲み方 ラブレターの流儀、博打の打ち方、、等々)を回顧録としても、熱く、筋を通して、 しかし解り易く語られています。
かつて毎年、山口瞳さんが新成人に送る言葉を成人式の日の朝刊に連載されていましたが 同じく伊集院流としても、 「新成人の諸君に少し言っておく、、、 自分だけが良ければいいと考えるな。ガキの時はそれも許されるが、大人の男にとって それは卑しいことだ。
咄嗟にプラットホームから飛び降り、人を救おうとした、あの 韓国人青年の勇気と品格を思い出せ、、」と。。
また、城山三郎氏や吉行淳之介氏の言葉も引いて(個人的にご両名とも大好きです)、 大人の男の生き方、考え方を、まわりくどくなく、ブレず、ピシャリと言ってのけます。
若者が読むも良し、おじさんが読むも良し、また女性が溜め息をつきながら (こんな男がいるのかしら?、、と)読むも良し。
最後の章の “愛する人との別れ”~妻・夏目雅子と暮らした日々 は、長い重い25年の 時間の封印を破って記されました。
「とうとう書いたか、、」と誰もが感じることでしょう。
愛の大きさは、一緒に過ごした時間、一緒に暮らした年月の長さには比例しない、、を 痛いほど感じるのは、この淡々とした文章のせいでしょうか。
当事者のみが可能となる素直すぎる心情の吐露、、数十年の経過が無駄(余計な表現)を全て 削ぎ落とさせたのかと感じます。 、、、伊集院さん、申し訳ありません、こんな薄っぺらな表現しか出来なくて。。 しかし本当の男の優しさ、、、これを持っている人、これを解る人、随分と少なくなりました。