「のび太」という生き方

横山泰行(富山大学名誉教授)

ビジネス書(自己啓発)

社員のKさんから薦められてお借りしました。。
流行りの奇をてらった表題で少し戸惑いましたが。。
大学教授執筆の藤子・F・不二雄 論とでも申しましょうか、、
「のび太が夢を叶えられる理由」を「のび太メソッド」と自ら名付けて どんな人でも必ず夢は叶う、魔法の法則を7章に渡って市販されている 作品(ドラえもん)を引用して解説されています。
4章…夢の叶え方、「心配なことは考えない」、「自分の夢で周りを感動させる」
5章…「負けん気」が夢をかなえる、
6章…夢は叶うと信じきる、、等々
藤子・F・不二雄 哲学の基本「夢や冒険に憧れ続ける心を持って欲しい」を 読みとり、誰にでも解り易く纏められました。
一般的な成功書?を読みなれた方には少々物足りなさを感じるかもしれませんが 基本的な考え方、、これは不変です…願って行動すれば叶う!!、、です。
基本能力、情熱、考え方の3要素を乗算した答えが人や仕事の評価点、、 稲盛哲学と同じです。 富山大学で「ドラえもん学」を開講(単位認定なし)。

父・金正日と私「金正男 独占告白」

五味洋治(東京新聞編集委員)

その他

2004年から昨年まで、直接のインタビュー3回、メール150回以上にわたる 北朝鮮ロイヤルファミリ― 長男 金正男氏とのやりとりが公開されました。
祖父(金日成)、父(金正日)、そして三代目の世襲となった異母兄弟 正恩氏への期待、、また経済特区失敗の原因や北朝鮮の「延坪島」への砲撃 更には革新・開明を父へ直言、外資誘致の必要性、拉致問題、、等々、日本人 新聞記者からの質問に明快に回答。
父・金正日は三代世襲を否定して来たにも関わらず正恩氏へ、、また正男氏も 「もの笑いの対象」とまで言い放つも、長年に渡る放蕩は何を意図するのか? 先で何かを企む、、そう、討ち入り前の内蔵助か???。
しかし立場があるので質問者も回答者も、もう一歩踏み込めず 週刊誌ネタのようで少し落胆。
時期的には格好の題材であったが。

蜩の記(ひぐらしのき)

葉室麟

ノンフィクション・小説

第146回 直木賞受賞作

時代小説では久々の慟哭、、です。
武士の潔さ、気高さに読む姿勢をも正されます。
声を出して泣くと恥ずかしいので、一人でお読みください。。
城内で刃傷沙汰に及んだ檀野庄三郎は切腹を免れ、幽閉中の戸田秋谷の監視役を命ぜられます。 戸田秋谷は藩主の側室との不義密通の罪で10年後の切腹を命ぜられた言わば謹慎中の身。 庄三郎は監視役でありながらも、秋谷の武士としての清廉、気高さに魅せられ やがては秋谷の無実を信ずるようになる。
秋谷の子、妻、それらを取り囲む村人達、、全てが少し出来過ぎ、と感じながらも 嗚咽が止まらないのは年のせいでしょうか。
、、、秀逸な時代小説に出会いました。。

政治家の殺し方

中田宏 (前横浜市長)

ビジネス書(業界解説)

史上最年少の政令都市の市長誕生!、次世代のホープ!、、と鳴り物入りで登場したが 二期目を全うせず、途中で国政に目が眩んだかと考えたりして (当時は“宮崎をどげんかせんとイカン”の人が総理大臣になりたい?等の話題が 上がった時期でもありましたので)また品の無い話題にも 尽きること無く、毎週のように週刊誌を賑わせておりましたので、 一般人としてはやはり「火の無いところに煙はたたない」ぐらいで考えておりましたが、、 読み終えた今はひたすら自分を恥じております、、、中田さん、本当にごめんなさい。
改革は怒りを買い、そして嫌われる、、とくに公務員の世界では。
政敵の執拗なまでの嫌がらせを赤裸々に暴露…恐らく横浜市民の方はこの政敵が 誰なのかは確実に判る書き方です。
メールで「バカ市長死ね」と、庁内LANで部署名、実名入りで毎日送られて来たようですが やはり公務員はヒマなのでしょうか。
別途嫌われる理由として「自分の性格」を上げられています。 それは「歯に衣着せぬ」、だそうです。 たしかに、「物も言い様で、、」ですが、自分のボスに“死ね”なんぞとメールする大バカ野郎に 言い回しを気遣う必要は有りません。
公務員はクビには出来ない様ですが、民間の会社ですと即刻クビですぞ。 2011年10月第1刷です。 現在は大阪市 橋本市政の顧問?。

勝ち続ける経営

原田泳幸(日本マクドナルドHD会長兼CEO)

ビジネス書(業界解説)

アップルで7年間社長を務めた後、現職に。
マックからマックへ、、と評判になりましたが、7期連続の赤字企業(マクドナルド)を、見事 7年連続の増収増益企業へと導きました。
ご本人はアップルに14年在籍された生粋のエンジニアですので、料飲関係の知識は全くお持ち では無かった筈ですが、逆に生半可な知識が無いのが故の成功かとも感じます。
しかし、「基本に立ち返る」「変化は自分で起こす」「ビジネスはスピード」、、、等々 原理原則はブレずに周囲の反対もものともせず、決めたからには結果が出るまでやり遂げる。 「信念」を持った人だと確信しました。
また一般の経営書に付き物のマーケット論は、教科書通りではなく斬新です。 お客様の操縦は無理、誘導は可能、、なるほど、です。
特別付録「セミナー時に寄せられた質問&回答」は、本書全160ページ中、60ページを 割き、受講者からの質問に実に明快に答えられています。

Q:エンジニアとして入ったアップルでは、途中で社長になりたいと野望が膨らんだのか?
A:キャリアは自分考えるものではない、、周りから来るものだ。
  営業に行かされるのも、いやでいやでしかたがなかったが、 「チャンスに巡り合うためには、期待以上のことを毎日やることだけだ」
と言っています。
また、人はどうやって育つか言うと、不自由を感じた時、苦労をしたとき、修羅場をくぐった時 、、そういった時に初めて「未体験の世界に入り、知恵が出て、エネルギーが出て、困難を 乗り越えられる」とも。
プライベートでは、自分で考えるエネルギーの基礎体力が必要と力説し、自分の息子には 勉強はしなくてもよいから運動しろと、勉強も教えない、家でゲームもさせない、、私の 大好きなオヤジ像です。

大人の流儀

伊集院静

ノンフィクション・小説

2011年3月に初版を出すも2カ月後の5月には、第6刷発行となっていますので 相当数、売れているのでしょうか。
でもホントいいです。 イイ男です。
「あなたは筋を通す大人が、卑しくない男が少なくなった、、と嘆く資格が有りますか?」
大人の「人」として、「男」として、こうあらねばならない論を 春・夏・秋・冬で、人生で起こり得るべき出来事に沿って、また作者が経験した上での 対応方法(仕事、墓参りの作法、食通への苦言、ゴルフの真髄、酒の飲み方 ラブレターの流儀、博打の打ち方、、等々)を回顧録としても、熱く、筋を通して、 しかし解り易く語られています。
かつて毎年、山口瞳さんが新成人に送る言葉を成人式の日の朝刊に連載されていましたが 同じく伊集院流としても、 「新成人の諸君に少し言っておく、、、  自分だけが良ければいいと考えるな。ガキの時はそれも許されるが、大人の男にとって  それは卑しいことだ。
咄嗟にプラットホームから飛び降り、人を救おうとした、あの  韓国人青年の勇気と品格を思い出せ、、」と。。
また、城山三郎氏や吉行淳之介氏の言葉も引いて(個人的にご両名とも大好きです)、 大人の男の生き方、考え方を、まわりくどくなく、ブレず、ピシャリと言ってのけます。
若者が読むも良し、おじさんが読むも良し、また女性が溜め息をつきながら (こんな男がいるのかしら?、、と)読むも良し。
最後の章の “愛する人との別れ”~妻・夏目雅子と暮らした日々 は、長い重い25年の 時間の封印を破って記されました。
「とうとう書いたか、、」と誰もが感じることでしょう。
愛の大きさは、一緒に過ごした時間、一緒に暮らした年月の長さには比例しない、、を 痛いほど感じるのは、この淡々とした文章のせいでしょうか。
当事者のみが可能となる素直すぎる心情の吐露、、数十年の経過が無駄(余計な表現)を全て 削ぎ落とさせたのかと感じます。 、、、伊集院さん、申し訳ありません、こんな薄っぺらな表現しか出来なくて。。 しかし本当の男の優しさ、、、これを持っている人、これを解る人、随分と少なくなりました。

受け月

伊集院静

ノンフィクション・小説

(吉川英治文学新人賞、同文学賞、直木賞、柴田連三郎賞 各賞受賞)

夏目雅子、篠ひろ子の大女優を嫁にした作家。
近藤正彦の「ギンギラギンに、、」等、ヒット曲多数の作詞家でもある、、と書くと何かチャラけた男を想像しそうですが、作品を読むと全くもって、それらが誤解であることが解り、見抜けない?或いは有能な人間への単なるやっかみ?で自分の愚かさに恥じます。
詳細は、私の職務経歴書(宅ふぁいる便)をご覧ください。

http://c.filesend.to/plans/career/body.php?od=110421.html

また、ダイナースがメンバーだけに発行する「Signature」に旅のエッセイ(ゴルフものが多い?)を連載しています。
人生の辛酸をいやというほど味わった者のみぞ持つ本物の洞察力、、、
そして本物の大人の男の優しさ、色香と品格、博学、、全てを持ち合わせた魅力ある作家の一人です。
、、と、前置きが長くなりましたが、チカラの入れ様を感じて戴けましたでしょうか(笑)。。
「受け月」は、7編の野球小説からなる短編集です。
だが、野球小説と侮るなかれ、、人生は「獲得」と「喪失」の歴史であることの実証を、作者が高校、大学で経験した野球を通して綴ります。
人間の魅力、男のダンディズム、を時には端折って読み手に創造させ時には巧みな描写で奮い立たせ、気が付けばいつの間にやら「伊集院ワールド」へ。

第107回直木賞受賞作。
どれをとっても秀逸な短編。
これで納得(感動)出来なかったら、仕事も出来ないヤツかと、、は言い過ぎ?。

愚者の旅

倉本聰

その他

(向田邦子賞受賞)

倉本さんの作品に偏ってしまいましたが、しかしこれもイチオシです。
ご自身の経歴を開けっ広げに披露されています。
放送局を退社して独立、前途洋々に見えた作者の将来もNHKと大喧嘩して業界から締め出されトラックの運転手になろうと免許取得を目指したが、、、
個人的に大好きだった「前略おふくろ様」の最終回の制作風景も詳細に渡り描き出されています。
俳優との仕事、交友含め人間味溢れた文章で、またまた泣かせる場面多数です。。

愚者の質問

倉本聰

その他

情報防災機構会長、気象学者、生物学者、国際金融アナリスト、冒険家、、
様々な道のプロフェッショナルとの対談。
表題が記す通り、一般素人が疑問に思うこと(失礼!)を倉本聰が
専門家に尋ねる、、、目から鱗が沢山詰まっております。
中でも脳科学者、澤口先生との対談は非情興味深く読ませて戴きました。
霊長類、哺乳類、の中で、男性が女性を選ぶのは唯一、人間だけ、らしいです。
勿論、何故か?も書かれております。

北の人名録

倉本聰

ノンフィクション・小説

言わずもがな、TVドラマ「北の国から」の作家。
正直、「シナリオライターの書いたものなんて、、」と、喰わず嫌いのエリアではありましたが、たまたま私の好きな画家(アンドレ・ブラジリエ)の描いた絵がこの本の表紙になっていることを見つけ買い求めたところ、、
いやいや、これがまた文句なく面白く。。
「北の国から」が最終回を迎えるまで、作者が富良野へ移り住む様子やロケ中の出来事、、実名を入れた俳優、地元名士達との交友録です。
最後まで笑いと涙が絶えません。